p4c(=philosophy for children)スケッチ

p4c(=philosophy for children こどものための哲学)に取り組む「アトリエ はちみつ堂」の活動を通じて考えたことを記録していきます。

雰囲気

阪大で月一回開催されているワンコインコンサートに行った。ロマン主義の曲が4曲演奏され、中でも、最後の曲が印象的だった。パンフレットを見ると、その曲は「ラフマニノフ前奏曲集 作品23」、解説には「ロマン主義が目指した人間の感受性の表出に成功している」とあった。

 

1曲の演奏時間が長く、演奏中に次第に日が暮れていき、窓から入る夕日の光が演奏するピアニストの背中を照らしていた。曲の雰囲気と相まって幻想的な光景だった。演奏者は若いイタリア人で、才能あふれ前途有望な若者という形容がぴったりくるような男性だった。

 

演奏中、携帯電話の着信音が会場に鳴り響く場面があった。演奏者が少しだけ鳴るほうを気にしたように感じられた。他にも、観客のいびきが気になった場面もあった。入場料が安いことが、観客の雰囲気にも影響しているのだろうか。ピアノのコンサートに来る機会があまりないから判断しにくいが、少し、空気が緩いような気がした。

 

コンサートが終わった後、以前から気になっていた居酒屋に入った。この界隈にそぐわない洒落た雰囲気が作られていて、店員さんもその店と同じように洒落ていた。何かが足りない気がした。しかたなく笑顔を貼り付け、働くのが面倒くさいと感じているようにも見えた。そう思い始めると店の料理も、なんだか味気なかった。

 

その店を出た後、近くの馴染みの居酒屋に場所を移した。いかにも大衆居酒屋という雰囲気で、煙草の煙が漂っていた。出てくる料理が盛り付けられている皿は、家庭で使うようなものだった。アサリのバター焼きとたこぶつを注文した。食べ終わった貝の殻を横によけていると、店主が申し訳なさそうな笑顔で、空の皿を差し出した。

 

コンサートと居酒屋2つ。それぞれの雰囲気があった。どれも、各場所を取り巻く要素によって、必然的に決まっている雰囲気のように感じられた。