p4c(=philosophy for children)スケッチ

p4c(=philosophy for children こどものための哲学)に取り組む「アトリエ はちみつ堂」の活動を通じて考えたことを記録していきます。

大勢の中で

大勢の人の中で話していると、反応速度を競う競技に参加しているような気になる。手がよく動く。もっと早く、もっと上手い返しを、と気持ちばかりがあせって言葉がついてこない分をカバーしようとしているからだろうか。

 

体の前の、とても狭い位置を、肘から前の限られた部分だけがせかせかと動き回っている。一方、腕以外の部分は固まっていて、体の中心は上に上にと上がっていくような感じがする。体のバランスがとれなくなってぎこちない動きになる。地面に足がついているのかいないのか分からないような、体の下半分の感覚がどんどんなくなっていく。

 

次はこれを話そう、相手はこういう反応をしたからそれにこういう返しをしよう、この話題は盛り上がらないから話題を変えよう、あぁ上手くいった、失敗した、もうそろそろ切り上げたほうがいいのだろうか、相手は何を思っているんだろうか・・・目の前にいる人たちからどんどん遠ざかって、自分の妄想の世界の中にどんどん入っていく。いつも同じパターンの繰り返しだ。

 

焦っている時、こんな風に話をもっていこうとか、どうにかして自分の考えを認めさせてやろうという時は、たいてい体の一部分が動いている。それも速く、大きく。他人がそういうことをしているのは、そばで見ているとよく分かるのだが、自分が話している時はほとんど気づかない。 

 

相手のノリに合わせられないだけなら、それはそれで仕方がない。相手も、それに気づいた時点で引いていく。それだけのことだ。合わせられないことを認めたくない、あるいは自分に合わせてほしい、そういう欲が生まれると、おかしな状態になっていく。1人でいるときには、穏やかだと思っていた自分が、他人を前にすると次から次へと欲が浮かんでくる人間だったのだと気づかされる。

 

大勢の中にいるときほど、自分が試されていると思う。