p4c(=philosophy for children)スケッチ

p4c(=philosophy for children こどものための哲学)に取り組む「アトリエ はちみつ堂」の活動を通じて考えたことを記録していきます。

質問

近くで開かれている子ども食堂のイベントに参加した。知り合いや、顔を見たことがある人が何人かいたが、会話が盛り上がっていたので遠巻きに眺めていた。

 
たまたま近くにいた年長~小学1年生くらいの男の子がじっとこちらを見ていたので「どうしたの?」と声をかけ、それからしばらく話した。知らない大人と話す緊張感と興味が、表に出たり引っ込んだりを繰り返している感じだった。どう声をかければ空気が変わるのだろうかと思っていたが、気づくと男の子が手に持っていたミニオンのキャラクターが描かれたボールを指さして「それは何?」と聞いていた。「これはミニオンっていうんだよ。」そう言ってミニオンについて説明する様子はそれまでと少し違っていて、僕と男の子の間にあった緊張感がふっと緩んだ感じがした。
 
それからしばらくして、男の子は一緒に来ていたお母さんを探しにいった。
 
手に持っているものについて聞いた時の僕は、キャラクターがミニオンだと知っていて、ミニオンに関する答えが返ってくると予想をしていた。しかし、彼はそれを知らなかっただろう。僕自身が会話の先を見据えて話していたのに対して、彼は今この瞬間の会話のことだけを考えていたように思う。
 
質問に対してどんな答えが返ってくるのかなんとなく知っていて、それでも質問をすることがある。そういう時は相手もそれを察していて、共同作業で予め台本に決められたようなやり取りをなぞっていく。そのようなコミュニケーションが必要な場面もあるのかもしれない。
 
しかし、下手な台本をなぞっていくのはあまり気持ち良いとは思わない。男の子とのやり取りを振り返ると、自分自身の会話を軽んじる姿勢に対する不快感があった。どういう答えが返ってくるか予想がつくのであれば、それは聞く必要がないだろう。また、予想を立てて質問する時は、自分の予想が正しいことを相手にも求めるようなニュアンスが漂ってしまう場合が多い。そうなると、質問は独りよがりの要求へと形を変えてしまい、よりいっそう厄介なことになる。