p4c(=philosophy for children)スケッチ

p4c(=philosophy for children こどものための哲学)に取り組む「アトリエ はちみつ堂」の活動を通じて考えたことを記録していきます。

手紙(その2)

p4cに参加してくれた4年生の男の子に、こんな手紙を書いた。

 

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エクスペクトパトローナムさんへ

※「エクス~」はその日のp4cの哲学ネーム

 

土曜日は、子ども哲学に来てくれてありがとう。

 

この手紙では、子ども哲学が終わってから、ぼくがもう少し考えてみたいと思ったことを書きます。エクスペクトパトローナムさんも、一緒に考えてみてください。そして、また次に会ったときに考えたことを教えてくれると、嬉しいです。

 

土曜日は、アイヌの話を聞いて、その後、粘土遊びをしました。ぼくが、面白いと思ったのは、粘土遊びをしながら、エクスペクトパトローナムさんが言っていたことです。

 

エクスペクトパトローナムさんは、粘土で何を作るか、みんなで考えていたときに、「何も考えずに手を動かして、思うままに作ると、いい作品ができる」と言っていました。そして、作りながら「何も考えないようにしていたけど、壺(つぼ)を作ろうとしてしまった・・・」と残念そうにしていました。

 

子ども哲学がおわったあと、ぼくは、哲学の先生が教えてくれたことを思い出していました。

 

「文章を書く人は、もともと自分の頭の中にある『書きたいこと』を書くのではありません。頭の中がごちゃごちゃで、よくわからないまま、ペンを握って紙に向かう。文章を書き終わってから、何を書きたかったかを知るのです。」

 

先生はそう言っていました。

 

学校で「何か意見のある人?」と聞かれることがあると思います。頑張って意見を考えてから、手をあげるのが普通かもしれません。でも、もしかすると、とりあえず手をあげてみて、みんなの前にたってみるのも、いいのかもしれません。そうすると、意見がうかぶのかも。

 

こんなことを考えながら、ぼくはこんな「問い」を思いつきました。

 

問い→やってみるまえは、よくわからないことが多いです。でも、とりあえずやってみると段々楽しくなってくることがあります。(ぼくは、勉強がそうでした。ずっと勉強が嫌いだったけど、最近は楽しいです) これは、どうしてだろう?

 

エクスペクトパトローナムさんは、どう思いますか?こういう気持ちになったことはありますか?おうちの人とも話してみてください。

 

それでは、また会うのを楽しみにしています。

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手紙を読んで、もし何か考えたことがあればそれをテーマに次のp4cをやろうということになっていた。

 

そして次のp4cの時、男の子が教室に入ってきてこう言った。自分はこの手紙を読んで色々考えてきたけど、まずは何も考えずに教室に入って、そこで思いついたことを話そうと思った、と。

 

とんちが効いた答えだと思った。しかし、本人はしごく真面目で、むしろ色々考えた結果、最もよい考えだという様子だった。

 

結局、彼が思いついたアイデアから、なぜだか死刑制度の話になって、どうして人は人を殺してしまうのだろうか、とか、死刑にすると、その人が変わってしまうチャンスを奪ってしまうのではないか、人は本当に変われるのだろうか、と思わぬ方向に話は進んでいった。 

 

そうして考えは深まっていき、楽しいと思える。そういう機会は稀であって、有り難い。