『バートルビー』
主人公のバートルビーは、決められた仕事以外には「せずにすめばありがたいのですが」と返答する。そう答えて断る回数が次第に増えていき、最後には一切を「せずにすめばありがたいのですが」と拒んでいく。
そんなバードルビーが、一言だけ雇い主に向かって言い返すシーンがある。どうしてそんなに何もしようとしないのか?と問いかける雇い主に向かって「あなたにはそれが分からないのですか」と問い直す。
日々、あれをしなければこれをしなければ、と思いながら生きている。朝起きて急いで身支度をして仕事に行かなければいけない。職場についたら昨日やり残した片付けをしなければいけない。お昼休憩のために午前の仕事を早く終わらさなければいけない。帰って勉強をしなければ、すきまを見つけて本を読まなければ、ご飯を食べたら明日に備えて早く寝なければ・・・
ただ、一日一日を乗り越えるだけで精一杯なのに、焦りからか、刺激を求めてか新しいことを始めては、煩わしくなって中途半端に頓挫してしまう。自分1人の問題ならばいいが、他人とも関わる場合、失礼な形で終わってしまうことも多い。
できないことはできない、と開き直れもせず、申し訳なさそうにしながらも結局のところできないことはできない。もう何年も、その繰り返しを続けている。変わろうと思うと大抵、同じ結果になる。流れるままに流れていった時にだけ、いつもと少し違った場所に向かっているように感じる。