p4c(=philosophy for children)スケッチ

p4c(=philosophy for children こどものための哲学)に取り組む「アトリエ はちみつ堂」の活動を通じて考えたことを記録していきます。

昔の友人と会う

昔の友人と会うときの緊張感がある。

 

かつて、自分が繰り返していたコミュニケーションのパターンがあって、長い時間をかけて、否定し、更新し、別の方法を模索してきた。そういう歴史がいっぺんになかったかのように、時間が巻き戻されてしまうような力を、自分の内側に感じる。

 

同窓会の醍醐味は、いくつになっても、会って話すと学生時代を一緒に過ごしたその時に戻れることだと思う。でもそれは、ぼくにとっては恐ろしいことでもある。

 

かつて、ぼくが繰り返してきたパターンがある。誰にも嫌われたくない、周りを傷つけず、それなりに良いことを言って、評価を得る。それを悟られないように、自然に、あたかも今思いついたかのように。信用していないのに、信用しているかのように。

 

それが悪かったとは思わない。色々な理由や、状況があって、今となっては思い出せないことばかりだ。

 

でも、それを繰り返す時の、乾いた気持ちははっきりと残っている。そういう時が今でもたまにあって、その時は口をつぐんで、その場から一刻も早く立ち去りたいと思いながらもそれができないまま、虚しく口を動かし続けている。

 

自分のありようは少しずつ、変わっているような気もするが、いざ誰かを前にすると、ぼくがこれまでその人に対して繰り返してきたパターンに、強烈に引き寄せられていく。自分の意志なのかもわからない。ただ、決められた状況で、オートマチックで反応する機械になったようになる。

 

その誰かを前に、ぼくがどんな時間を積み重ねてきたか。それが誠実であれば誠実に話せる。それが、偽善的であれば偽善的になる。今のぼくは、過去のぼくに対してほとんど無力だ。

 

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それならば、昔の友人と会わなければ良いような気もするが、そうしようとは思ったことはない。会いたくない時はあるが、「会わなくていい」とは思わない。やり残した宿題を、吹っ切れない気持ちなのかもしれない。とても大切な課題は、取り組もうが取り組まなかろうが、大切であることに変わりはない。

 

昔の友人と会って、話す。帰り道、こんな話を彼/彼女とするのは初めてかもしれないな、と思うことがある。そういう時、思い出す会話の中の相手は、これまで長く付き合った顔ではなく、初めて見る顔をしている。見知った人が、初対面の人のように感じられる。その時、喜びといっていいような感情を見つける。

 

緊張、不安、恐怖。その先に不思議な喜びがある。