p4c(=philosophy for children)スケッチ

p4c(=philosophy for children こどものための哲学)に取り組む「アトリエ はちみつ堂」の活動を通じて考えたことを記録していきます。

靴を買った。歩き方に問題を感じていて、少しでも改善すればよいと思って購入した。

 

足についての理解を深めるためにも、足形の計測をした上で適切な靴を紹介してもらいたいと思い、そういったサービスのある店を調べてから梅田に向かった。最初に入ったのは、梅田で一番新しい商業施設に入っているスポーツブランドショップだった。全体的に白を基調とした店で、空間が広く使われていて中に入るのに少し緊張感があった。
 
その店は足形計測に加えて歩行分析のサービスもあり、最新の設備がそろっているようだった。ただ店員と話していると最低限の答えしか返ってこず、ある程度の知識を前提としているようだった。確かにその店は、どちらかというと高品質のランニングシューズに特化しており、自分が求めていたのは初心者向きのウォーキングシューズだった。自分は店の顧客として相手にされていないと感じ、店を出た。
 
その後、地下街にあるアシックスのショップに行き、青色でスニーカータイプのウォーキングシューズを購入した。店構えも普通だったのであまり期待していなかったが、足形の3D計測をして靴を紹介するサービスがあり、セミオーダーメイドの中敷きの提案もあった。計測の結果は、A4の紙1枚にまとめられていた。
 
自分では幅広だと思っていた足幅が実際は平均以下であること、踵の角度が内側に傾いていることを知った。 前々から足の内側が崩れてX脚気味になっていると感じていたが、計測のおかげで裏付けができた。なんとなく感じているのと、事実として知るのでは、体の感覚に変化が起こりそうな気がする。また、もし今回の計測をしなければ、自分はずっと足が幅広な人間だと思い込み続けていたのだと思う。
 
以前、あるドキュメンタリーで化学調味料に体が反応してしびれが出るという人に、実際には無添加の有機野菜のみを使用した料理を出したにも関わらずその人は体のしびれを主張した、という場面を見た。番組の狙いは、人間の感覚は思い込みに左右されるので当てにならないと伝えるもので、製作者の意図がはっきり伝わってきた。
 
登場する人々が、製作者の意図を伝えるための道具としてのみ扱われているように感じられ、あまり好きな演出ではなかった。しかし「自分の素朴な感覚」に対して警戒を忘れてはならないと思うには十分な番組だった。その「感覚」は思い込みによって生み出された幻覚かもしれない。
 
中敷きの調整を待つ20分くらいの間、幅広だと思い込んでいた自分の足を眺めながらその番組のことを思い出していた。そのうち調整が終わり、50代前半くらいの物腰の柔らかい男性の店員が靴を持ってきてくれた。靴を履くときに、ポケットから小さな靴履きを出して踵を入れる手助けをする様子がとても手馴れていた。
 
靴に足を入れると足底の感触がはっきりとしていて、試しに歩いてみると床との距離が近く感じられた。それまで履いていた靴を使って感覚を研ぎ澄まそうとしても、この感触には至らなかっただろう。努力に対して盲目的になっていた自分の必死さを思った。